ターゲティング

ターゲティング

ターゲティング

 

セグメンテーションによって各集団の違いが把握できたところで、いよいよ自社が狙う対象層を明確にするターゲティングを行う。特定のセグメントを絞り込む前にどのようなアプローチで市場を攻略するか方針を決めておく必要がある。

市場の攻略法は大きく三つある。

 

①非差別化マーケティング

 

一つの製品と一つのマーケティングミックスを用い、 市場全体あるいは最大のセグメントをターゲットとする、マス・マーケティングの手法である。市場構成者が多かれ少なかれ、日常的に使用したり、関心を持っている製品でよく見られる。

この手法はコストを抑えることができる点で優れているが、最大セグメントの平均化されたニーズしか満たせないため、市場機会を逃すことも多い。そうした反省から、次に示す「差別化マーケティング」や「集中化マーケティング」が発達していった。

 

②差別化マーケティング

 

複数のセグメントにそれぞれ異なる製品、マーケティングミックスを用意する、いわゆるフルライン戦略である。トヨタ自動車がその典型だ。 あらゆるドライバーの思考やニーズに合うように、サイズやタイプ、価格の違う様々な車種を取り揃え、それぞれに対応するチャネルや販売方法を用意している。この手法のメリットは、細かなセグメントごとに製品を提供することでトータルの売上高が最大化できる点にあるが、コストは増大化することになる。理論上、企業はコストの増加分が売上の増加分と並ぶ地点まで対象セグメントを広げることで、利益を最大化しうるがその判断は容易ではない。

 

③集中化マーケティング

 

あるセグメントに特化し、そこに全経営資源を集中して独自の地位を築く戦略である。規模の拡大は追いにくいが、集中することにより、そのセグメントに対する知識が深まり専門性が高まる。この手法は、企業体力が小さく、差別化戦略を取りにくい場合によく用いられる。主に沖縄県で営業活動しているオリオンビールや、特定エリアで展開しているスーパーチェーン、不動産サービスなどがこれに該当する。

 

ターゲット選定の条件

 

基本的なアプローチを決めた後、自社にとって最も魅力的なセグメントを選んでいくのだが、その際には、次に示す6 R に留意しながら、自社の経営資源や環境要因などの制約条件も踏まえて、総合的に判断していく必要がある。

 

6 R

① 有効な市場規模(Realisutic Scale)

市場規模は当然ながら、大きい方がより魅力的である。少なくとも、その事業が成立する最低限の規模を確保できるセグメントでなくてはならない。

 

②成長性(Rate of growth)

一般的に、市場の生成段階や、成長初期には、売上やシェア獲得の大きなチャンスがある。しかし、現在は規模が小さくても、技術の進化などに伴って新しい用途が発生し、やがては何十倍にまで拡大するケースもあるので、市場の成長性についても見極める必要がある。

 

③競合状況(Rival)

規模が大きい、あるいは今後の成長性が見込める市場は通常、他の企業にとっても魅力的なので、 多数の企業が参入し、競争が激しくなることが多い。そうなると、目標シェアを獲得するために開発やマーケティングに多大な投資をしなければならなくなったり、収益性が低下してしまったりする。従って、そのセグメントの魅力度を検討する時には、規模や成長だけでなく、収益性などにも考慮する必要がある。

すでに大きな地位を占めている競合が存在する場合も、そのセグメントの攻略は難しくなる。

④顧客の優先順位・波及効果(Rank ・ Ripple Effect)

セグメントごとに優先順位をつけて重要度の検討を行った方が良い。例えば、周囲への影響力の強いセグメントがあるなら、優先的にアプローチすべきである。新商品の受容スピードは、顧客の嗜好や性格などによって違いがあるので、オピニオンリーダーや口コミの発信源となる人々が存在するかという点も考慮する必要がある。

 

⑤到達可能性(Reach)

たとえ魅力的なセグメントであっても、地理的に遠かったり、名簿を入手できなかったり、 有効な情報伝達方法がなかったりすると、適切なマーケティング活動ができない場合がある。 インターネットの普及により、以前に比べて顧客にアクセスする制約条件ははるかに減っているが、 そのセグメントに確実にアクセスする方法があるかどうか、確認しなくてはならない。

 

⑥ 反応の測定可能性(Response)

広告の効果、商品に対する満足度など、そのセグメントに向けて実行した施策に対して、適切な結果がもたらされたかどうかを測定し、検証できるかどうかも、セグメントを選定する重要なポイントになる。なぜ売れているか、あるいはなぜ売れないのかという理由を探ったり、ある施設は特定セグメントには有効だが、他のセグメントには有効ではない、というような検証を行ったりするためだ。マーケティングでは常に顧客の状態や動向を見極めながら、必要に応じて、打ち手を微修正したり、変更を加えたりしなくてはならない。

自社の経営資源


たとえセグメントそのものが魅力的でも自社の経営資源の制約などから適切なマーケティングミックス戦略を実施することが不可能であれば、そのセグメントは選ぶべきではない。財務資源、技術力、生産能力、経営ノウハウ、販売組織、流通システムなどの観点から、自社の強みや弱みを評価し、そのセグメントにおいて自社が優位性を発揮できるかどうかを検討する。


環境要因


セグメントを選ぶ際は、法規制や社会団体からの干渉などの環境要因を考慮しなくてはならない。いくら魅力的なセグメントでも製品やサービスを提供することで、倫理上あるいは社会的な問題が生じれば、ブランドや企業イメージを低下させる恐れがある。
あるセグメントにおいて、現時点では問題となりそうな環境要因が存在していないとしても、類似のセグメントに存在している場合は注意が必要である。例えば日本において環境基準がないとしても、隣の B 国で厳しい環境基準が採択されれば、早晩日本でもそれが実施される可能性は高い。十分に情報を収集し、ウォッチしておく必要がある。



ターゲットの変更、拡大



マーケティング戦略は、ターゲット顧客を中心に組み立てていくものである。そのためターゲットとするセグメントの選択は、その後の戦略プロセスの方向性を決定づける重要な意思決定であり、長期にわたって戦略に影響を及ぼすこともある。特に世間一般に自社のポジショニングやブランドイメージが定着していたり、チャンネル構築に多大な投資を行っていたりすると、変更はそれほど容易ではない。マーケティング上の課題に対してはマーケティングミックス戦略の修正を行うことが先決だが、状況によってはターゲット層の拡大、変更を検討した方が良い場合もある。
特に環境変化によって顧客ニーズが急変することも珍しくはない。顧客の変化を把握するために定期的に調査を行ったり、セグメントやターゲット顧客を見直したりすることが重要である。


消費の二極化


現代は様々な局面において、消費の二極化傾向が見られる。、その理由のひとつは、ライフスタイルや個人の価値観の多様化である。所得水準とは関係なく、自分の興味のあるものには高額でもつぎ込む一方で、さほど関心のないものにはお金をかけない消費者が増えている。
興味があるものには高額でもいとわないという消費行動に着目して、マステージ(マスとプレステージの中間)商品を提供してワンランク上の消費を促す、富裕層向けマーケティングの手法を一部使って通常とは違う消費経験を提供する、などの動きも見られる。
さらに、二極化にはもちろん経済的な事情も影響している。
かつてはアメリカと比較して、日本の消費者が低価格よりも品質やブランドにこだわる傾向があるのは貧富の差がないせいだと言われていたが、最近では「一億総中流社会」が幻想であることが浮き彫りになりつつある。金融資産1億円以上持つ富裕層が増える一方で、所得格差が広がっている。統計局の就業構造基本調査でも、正規雇用者で年収300万円以下の人が30%を超え、増加の傾向にある。パート、アルバイトになると200万円以下が9割近くを占める。このところ小売大手では安価な 「PB品」 の売れ行きが伸びているが、価値観や嗜好よりも懐具合の影響が大きいと思われる。こうした二極化現象に対して、中途半端な戦略は以前にもまして通用しなくなってきた。企業側はどのような消費者に焦点を合わせて商品やサービスを提供していくのか、明確に意識しながら、メリハリの効いた判断をしていく必要がある。