新商品の市場導入、製品ラインの設計

新商品の市場導入、製品ラインの設計

第4段階市場導入

 

9.新商品の市場導入

次は、いよいよ市場導入である。これは最後の段階であり、もう後戻りはできない。すでに大枠でのマーケティング計画はできているはずなので、それに基づいた戦略づくりとその確実な実行に注力し、一気に事業基盤を築く。

経営資源を大量に投入する新製品の導入は、経営者にとって重大な意思決定である。従って、前記プロセスの各段階において、新たな問題点が発見された場合には、フィードバックを随時行い、戦略を練り直すことが必要不可欠である。これは当たり前のことのようであるが、動き出した計画をストップし、見直すことには非常に勇気を要するものである。

 

一連の新製品開発プロセスを進める際に、経営トップが根拠もなく好みを押し通す、他部門が協力したがらないなど、組織内でコンフリクトが生じることがある。

従って、評価や判断基準の明確化・客観化、処理権限の公式化などを念頭において新製品開発体制を整備すると共に、プロジェクト担当者が企業内で強力なリーダーシップを取れるようにすることも重要である。

 

製品ラインの設計

 

製品戦略では、個別の製品のみではなく、製品ライン全体という観点からも考えていくことで、製品力を増強することができる。特定セグメント向けにある製品がヒットした場合、バリエーションを少し負荷することで、周辺市場まで取り込めることが多いからだ。しかも、ゼロから新製品を立ち上げるより、マーケティングの活動効率がはるかに良い場合も多い。

製品ラインとは個々の製品の集合であり、「幅」と「深さ」という二次元の広がりを持つ。

「幅」とは、例えば自動車メーカーであれば、乗用車のみを扱うのか、それともトラックや二輪車も扱うのか、ということである。「深さ」とは、いくつのモデル数を扱うのか、ということである。一般的に、製品ラインの深さは、「高級-中級-低価格」あるいは「熟年向け-壮年向け-若年向け」のように設定される場合が多い。

マーケティング担当者は、長期的利益を最大化できるよう、あるいは企業の目的に合致するよう、最適な製品ラインを模索する必要がある。製品ライン政策に影響を与える要因を順に見ていこう。

 

1.顧客ニーズ

 

当然ながら、最も重要なのは顧客のニーズである。 市場が拡大・成熟するにつれて顧客ニーズが多様になり顧客はより深い製品ラインを望むようになる。逆に言えば、こうした顧客の変化に合わせて製品ラインを拡大していく必要がある。製品ラインを拡大する場合には既存の製造ラインを改良して新製品を追加する、というように既存の製品とのシナジーが効くことが期待される。


2.製品ごとの収益性



製品ライン政策に影響を与える第二の要素は、個別製品の収益性である。当然のことながら、ある製品の収益性が低い、あるいはキャッシュフローが見込めないならば廃止の対象になる。もちろん、個別の製品自体は赤字でも、戦略的にその製品を維持することが有意義な場合にはこの限りではない。
例えば広告会社で言えばたとえ赤字路線であったとしても、東京ーニューヨーク便などは「広告塔」として運航し続けるかもしれない。あるいは、パソコンショップが総合専門店のイメージを保つために、一部の製品が多少の赤字を出していたとしても目をつぶる場合もあるだろう。また製品ラインの種類がスタンダードとラグジュアリー仕様のみだと、価格差が開きすぎて、幅の大きい上級バージョンが敬遠されるきらいがある。こうした場合、中間にワンクッションを入れると、購入の上級移行が促進される。

 

3.競合の状況


製品ライン政策を考える上で競合他社の製品戦略を知ることは重要である。競合の主力製品にあえて勝負を挑むこともあるだろうし、逆に相手があまりに強い場合は、これを避けて別の製品に注力することになるかもしれない。1970年代、アメリカの2輪車市場におけるホンダには、あえて大排気量でハーレーダビッドソンと戦うか、競争を避けて中排気量まででとどめるかの選択肢があったが、ホンダは後者を選んだ。


4.自社製品同士のカニバリゼーション



自社製品間の差別化が顧客に認知されず、カニバリゼーション起こしてしまうような場合には、製品ラインの整理、統廃合により、拡大を抑制したり、製品間の違いを顧客に認知させるようなマーケティング努力を行わなくてはならない。化粧品大手の資生堂は百貨店、化粧品系列店、ドラッグストアなど、様々なチャネル向けに多数のブランドを要していたが、一つ一つのブランド戦略が見えにくくなったことから、2000年半ば頃からブランド集約を進め、それぞれのターゲットや特徴を明確にし、ブランド・ポートフォリオの管理を徹底するようになった。


5.リスク分散

 

一つの製品に売上が偏りすぎていると、その製品の売上が急激に落ち込んだ時には大きなダメージを被る。BSE(狂牛病)感染疑惑でアメリカ産牛肉の輸入が一時的にストップした時、牛丼をメインにする吉野家などの飲食業は調達困難に陥った。牛肉を経営するムードも広がった。吉野家は豚肉を使うと言った代替メニューを考案するなどして危機を乗り切ったが、社内のオペレーションを整備していても、思いがけない外部環境の変化に見舞われ、大きなダメージを受けてしまうことがある。企業としては市場の動向や自社の強みを理解したうえで、適切な製品ラインを持つようにしなくてはならない。