流通戦略1

流通戦略1

流通戦略

 

ポイント

 

流通チャネルは、企業の競争優位を構築するうえで、極めて大きな意味を持つ。その主機能は、製品を効率的に市場に届けるとともに、市場からの情報を効率的に収集することである。企業側は、製品の特性、ユーザーの特性、総合環境などを総合的に考慮に入れて、最適な流通チャネルを選択し、構築する必要がある。

 

理論

 

優れたチャネルの存在は企業にとって大きな資産となり、長期的な優位性構築の源泉にもなる。パナソニックや資生堂が優良企業であり続けたのは、そのチャネル力によるところが大きく、チャネルの獲得は企業買収の主要目的の一つにもなっている。流通チャネルは、その大部分が基本的に外部資源であるという点で、他のマーケティングミックスとは本質的に異なる。その構築には通常、非常に多くの時間と費用がかかる上、簡単に変更できないことも多く、長期的観点からの意思決定が求められる。ここでは、流通チャネルの設計やマネジメントのポイントについて解説していく。

 

流通チャネルの意義

 

製品の生産者と最終顧客との間を結ぶのが、流通業者である。流通チャネルは、企業独自の販売網やサービス機関に加え、再販機能を果たす販売代理店、卸売業者、ディーラー、小売業者などの外部組織によって成り立っている。流通チャネルは、製品が倉庫から届くまでの物理的流通のパイプライン、および市場の現場と企業をつなぐ情報伝達経路として、中心的な働きをしている。

流通業者が介在することで取引全体が合理化される。不特定多数の買い手を相手に個別に取引を行わなくてはならない場合、そのコストは莫大になる。つまり、メーカー側にとっても、顧客側にとっても、流通業者は経済合理性を高めているのである。

この点について、年間生産量が約4億本にもなる鉛筆の例で考えてみよう。三菱鉛筆やトンボ鉛筆といったメーカーの営業担当者が、不特定多数の個人や法人ユーザーに直接売り込むことは不可能である。顧客は鉛筆を文房具店や雑貨店で買うが、文房具店だけでも全国に数万店が存在するので、鉛筆メーカーの社員が各県を担当することは経済的に合わない。ここから、鉛筆に限らず、消しゴムから定規、便せん、ノート、ファクシミリ用紙に至るまで、あらゆる文房具や関連製品をまとめて仕入れて文房具店などに卸す問屋の活躍の場が出てくるのである。

 次に、流通チャネルが果たす機能について見てみよう。製品の提供者がターゲット顧客に対して創造した価値を供与し、その見返りとして対価の支払いを得るという交換活動を営むうえで、埋めなくてはならない様々なギャップが存在する。製品の提供者と消費者との間にある、こうしたギャップを埋めるために、流通チャネルは次のような機能を担っている。

 

【主機能】

・調査(製品の交換を計画し、実施するための情報収集)

・プロモーション(広告、販売活動の促進、人的販売)

・接触(見込み客を探し、コンタクトをとること)

・マッチング(顧客の要望に合わせた製品を提供するために、包装、組み合わせなどを行うこと、及びメンテナンス)

・交渉(価格を含む販売に関わる諸条件の最終合意作りを行うこと)

 

販売支援機能

・ロジスティクス(業務管理、在庫管理)

・ファイナンス機能(売上回収、流通に必要な資金の調達と融資)

リスク分担(流通業務施行に伴うリスク、輸送途中の事故などーをとること)

 

流通チャネルは広範囲にわたる活動を行うが、製品のタイプに応じて重要な機能は異なる。

消費財の場合は、通常チャンネルに最も期待される機能はプロモーションやマッチング、ロジスティクスである。生産財では、接触や交渉の比重が高まり、さらにはマッチング(特に製品のアフターサービス)が期待されるようになる。アフターサービスは、特にオフィス機器や工場設備などの市場で重要な役割を果たす。

 

流通チャネルの種類

 

流通チャネルはその参加者および構造により、いくつかのパターンに分類される。

 

自社組織と外部組織

まず,自社の従業員で構成される自社の営業組織と、代理店やディーラー、小売店の

ように複数企業の製品を再販する外部の流通組織を明確に区別しておく必要がある。分

社化されている販売会社はこの中間的な位国づけとなるが、資本関係があり、自社製品

のみを扱うのであれば,自社組織と考えるほうがよいだろう。自社の営業は、ユー

ザーに直接販売する場合と、外部の流通業者に販売する場合とがある。

 

自社の営業組織

流通チャネルの中で、自社の営業担当者が果たす役割はさまざまである基本的な仕

事は潜在顧客、あるいは下位の流通業者を訪問して購入を勧めることであるが、必ずし

も注文をとることだけが営業担当者の役割ではない。営業担当者は、価格および契約条

件の交渉をするほか、配送を促す、製品の設置を監督する、クレームを処理する返品

を受け付ける、

といった販売後の責任も引き受ける。

流通業者を訪問する担当者は、これらの機能に加えて、製品技術や販売技術の面で流

通業者を教育する機能も果たす。そして通常、流通業者の在庫を調査し、在庫補充の注

文を扱う。そのうえ、製品のデモンストレーションなどの販売促進活動を行ったり、流

通業者の業務管理の改善計画を提案したりする

法人相手のビジネスでは、営業担当者は直接の購入者やユーザーだけではなく,購入

の意思決定に影響力を持つ関係者にも働きかけることが多い。例えば、建材メーカーの

営業担当者は、実際にユーザーとなる施主やゼネコン以外に、建物を設計し使用資材を

決める建築家に営業活動を行う。航空機のエンジンでは、アメリカの大手メーカーの

GE (ゼネラル·エレクトリック)は、エンドユーザーである航空会社に対して営業をか

けて、機体メーカーに新しい航空機を発注する際にGEのエンジンを指定してもらうよ

うに働きかけている。

外部の流通組織

 

消費財などでは、外部の流通業者を指して流通チャネルと呼ぶこともある(狭義の定

義)。外部の流通業者は、メーカー(もしくは、自社より上流の流通業者)から仕入れた物

品の販売を行うことで利益を得る。また、流通業者は一般に、限られた分野の製品を扱

う専門業者と、幅広い分野の製品を扱う一般業者に分けられる。多くの流通業者は複数

の支店・店舗を持っているが、そのサービスの大半は地域的に限定されており、各企業

は製品ラインや顧客サービスをその地域に適合したものにするなど、独自の運営スタイ

ルを築いている。

一般に、メーカーと流通業者との関係は、明文化された協定に基づく長期的なもので

あることが多い。これにより、流通業者は安定した供給源を確保するとともに、販売ト

レーニングや新製品情報、在庫管理、顧客サービス、技術支援などの面でメーカーから

の援助を受けることができるのである

ただし現在では、流通業者はメーカーに頼りきりというよりも、メーカーに対して強

い交渉力を持つようになっている。特に、大資本による全国規模のチェーン組織は、一

方で地域の市場環境に適合する柔軟性を持ちながら、他方では仕入先との交渉で絶大な

取扱量に支えられて、メーカーに対して強気の交渉ができるようになった。また、

イトーヨーカドーなどを擁するセブン&アイ·ホールディングスのように、ITを駆使して売

れ筋管理や在庫管理を推進し、情報を蓄積することで、メーカーに対する影響力を強め

ているところも多い。

 

小売業者と卸売業者

 

外部の流通組織はさらに、直接エンドユーザーと接する小売業者と、エンドユーザー

とは直接接触しない卸売業者に分類される。当然ながら、求められる役割も異なる。

 

小売業者

ある製品の存在を知り、興味を持った顧客は、どうやってその製品に接触しようとす

るだろうか。まず、どこで販売されているかを知ろうとするだろう。そして、自動車な

らカーディーラー、パソコンなら家電販売店、高級衣料品なら有名百貨店、刑行機のチ

ケットなら旅行代理店やチケット・カウンターへ出かけるだろう。小売業者に求められ

る機能として特に重視されるのが、集客機能である。

顧客は、ある製品を買いにきたついでに別の製品に行き当たることもある。そうなる

と、目立つ場所や大きな棚面積を確保できる製品ほど有利になる。顧客が直接その製品

て接触するという意味でも、小売業者は非常に大きな意味を持つ。したがって、小売業

に対して営業活動を行うときには、単にあの百貨店に入ったとか、スーパーの棚を確

保したということだけで満足すべきではない。百貨店なら、どのフロアのどの位置に、

どの程度の規模やディスプレーで売り場を確保したのか、スーパーなら、最も目立つ場

所で、かつ目線の位置に十分なスペースを確保できたかというところまで話を詰めて初

めて仕事が完結するのである。

小売業者は通常、地代、店舗投資、販売員経費、販促経費などさまざまな出費が必要

になるため、卸売業者と比較してマージンは高く設定される。正札価格を極力キープしている百貨店では4~5割のマージンが設定されている。

 

卸売業者

買い手の数が増えるに従って、メーカーと小売業者の取引は加速度的に煩雑さを増していく。そこで、その製品の特性や地域にマッチした卸売業者が、メーカーと不特定多数の小売業者の間に介在して、見込み客が接触するであろう小売チャネルに効率よく製品を届け、かつ顧客からの情報を吸い上げるめのさまざまな便宜を図るのである。

こうした卸売業者の機能が、最終顧客の目に止まることは稀である。また、その期待

される役割が、複数の製品提供者と小売業者の間の接触回数を大幅に減らすことにある

ことから、その機能はきわめて労働集約的な組織や複雑な人間関係のうえに構築されて

いる場合が多い。川上(メーカー)や川下(小売業者)の両側から絶え間なく流通合理化

の圧力がかかるのも、この業界の宿命と言える。

なお、卸売業者には、製品を買い取って販売する業者もいれば、売り手と買い手の間

を仲介することで口銭(利ザヤ)を得る業者もいる。当然ながら、買い取りリスクを負

う前者のほうがより大きなマージンを得ることになる。