流通戦略2

流通戦略2

流通チャネルの段階数

流通チャネルの構造は、その段階数でも特徴づけられる。何段階の流通チャネルを用いるかは、その製品の特性によるところが大きい。一般に、製品がコモディティ化するほど、流通チャネルは多層化する傾向にある。

 

ゼロ段階チャネル

 

メーカーが直接顧客に販売するケースである。典型的な例としては、基本的に訪問販

売に特化しているポーラ化粧品、通販会社大手のセシール、あるいは高価格少量生産の

建て売り住宅のようなビジネスが当てはまる(なお、通信販売業者であっても、千趣会は

ゼロ段階チャネルとは言えない。同社はセシールとは異なり、自社ブランド製品を持たず、既存のブランドの中から季節に応じた新製品を選択してカタログ展開している小売業者だ

ある)

販売量や金額が直接販売組織を賄うに十分な場合には、このゼロ段階チャネルは有効である。

直接販売には、販売活動を方向づけ、きちんとコントロールできる利点がある。

当然ながら、営業担当者は他社製品の販売に気を使うことなく、自社製品に集中するこ

とができ、顧客が求める製品情報や技術サポートなどを提供できる。

 

1段階チャネル

メーカーと消費者との間に流通業者が1つ介在する場合である。かつては家電や自動車業界のようにメーカー主導の系列化という形で進展してきたが、近年は大型小売業者が卸売業者を排して直接メーカーと取引する形態が増えつつある。

自動車業界では、ディーラーの経営不振に際し、メーカーが資本のテコ入れをするこ

とがある。その意味では部分的にゼロ段階化が進行しているとも言えよう。しかしなが

ら、このような垂直統合が度を超えると、独立系の販売店に脅威を与え、反発を招くこ

とにもなりかねない。

 

2段階チャネル、3段階チャネル

消費財において最も多く見られるのが、2段階チャネルである小売業者にとっては

少量取引に好都合であり、メーカーにとっては広範囲に販売を拡大しようとしたり、小

売業者が多数で分散している場合などにメリットがある。

比較的製品の単価が低く、購買頻度の高い最寄品になると、もう1段階増えて3段階

チャネルを通して販売されるようになる。食料品や日用雑貨品など、小売店の数が多い

製品がこれに該当する。

時計はさまざまな流通業者が介在するビジネスであるが、一般に、名の通ったブラン

ドは2段階止まりの場合が多い。一方、弱小ブランドや10万店存在すると言われる種種雑多な時計販売店への流通は、二次卸経由の3段階チャネルとなる場合が多い。

このような分類はわかりやすい半面、事象を単純化しすぎている側面もある。実際に、

流通構造が何段階になっているかの判断は晒ずしも簡単ではない。例えば、部品業者か

ら部品を仕入れて組み立てているだけの、純粋なメーカーとは言いがたい製造業者も多

いし、資本参加により製造販売を垂直統合しているケースも少なくない。メーカーと小

売関者の両方のブランド名の付いたダブルネーム製品も存在する。

さらに、古典的なゼロ~3段階チャネルの概念では括れない形態もある。その代表的

な例として、マルチレベル方式、フランチャイズ方式、ライセンス方式が挙げられる。

 

 

  • マルチレベル方式

マルチレベレカ式は、アメリカで発達したビジネスであり、日本ではコンパクト洗剤

を中心とした品揃えのアムウェイや、スキンケア製品に特化しているニュースキンなど

が有名だ。

製品の提供者は問屋や小売店などの流通業者を通さないで、消費者のネットワークを

フルに活用するユニークなシステムである。核となるメンバーはディストリビュータ-

と呼ばれ、店舗を構える心要のない個人事業主として傘下の会員数(会員は製品を購入

したり,自らも販売活動を行ったりする)を増やす努力を行う。彼らは注文に応じて製品

を販売し、傘下のメンバーの売上げがアップするように、さまざまなサポートを行う。

傘下のメンバーが増えて売上げが増えれば、それだけバックマージンも増えるので、限

りなく収入が伸びる可能性を持つ。

この方式の利点は、多大な初期投資を心要としないという点である。ニュースキンの

創始者は、1970年代初頭に手持ちの200ドルでこのビジネスを始めた。一方、最大

の欠点は、社会的ななじみが薄く、詐欺まがいの不適切な方法で勧誘するマルチ商法や

ネズミ講ではないかと警戒されやすいことである。ビジネスのイメージを崩さないよう、

ディストリピューターにはかなり詳細な行動規範を定めるのが通例だが、それでも心な

い会員がトラブルを起こすリスクは払拭できない。

 

  • フランチャイズ方式

コンビニエンスストア、コーヒーショップ、ファストフード、語学学校などに典型的に見られるシステムである。

 

フランチャイザー(ビジネス·システムの提供者)は、製品のトレードマークの使用権

およびビジネスの構築からオペレーション·システムまでのノウハウのすべてをフラン

ジー(フランチャイザーから特定地域のビジネス·システム使用権を得て、自己資本や

労力を供して事業化する個人や企業)に提供し、仰面サポートする見返りとしてロイヤ

ルティを徴収する。また、共同仕入れを義務づけることにより、仕入れからの利ザヤを

稼ぐことも可能である。ただし、顧客との接触がまったくなく,すべてフランチャイズしていたのではサービスの質を管理できないため、直営方式とフランチャイズ方式を組み合わせることが多い。

フランチャイズ方式の最大の利点は、他人の資本や労力を活用して急速にシェアを拡

大できるところにある。マクドナルドと違い、大手資本をバックに持たなかったモスバ

ガーの場合、直営店にこだわっていたら迅速に店舗数を増やすことはできなかっただ

ろう。フランチャイジー側にしても、資金とやる気はあってもどうやって事業に取り組

んだらよいかわからない人や、リスクを抑えて資産を有効活用したい人が数多く存在す

る。フランチャイズは、こうした互いのニーズを補い合う方式である。

フランチャイズ方式では、フランチャイジー間の格差を是正することが重要になる。

店舗間でサービスにばらつきがあると、ある店舗の不評が他店舗の足を引っ張ることに

なったり、ブランド·イメージに悪影響を及ぼしたりする。

特に難しいのが、資産運用を目的に事業を行っているフランチャイジーを教育し、共

通の事業目的に向けてベクトル合わせをすることだ。フランチャイズ·システムの健全

性を保つためには、本部のコントロールが末端まで行き届いていなくてはならない。こ

のコントロールがうまくいっていれば、顧客は直営店かフランチャイズ店かの識別すら

できないはずである。

 

  • ライセンス方式

ライセンス方式とは、自社の努力によって築き上げたブランドやキャラクターの使用

権などを他社に貸すビジネスである。高級品ブランドのイヴ·サンローランや、多くの

人々に親しまれているキャラクターを擁するサンリオやディズニーは、ブランド名、

ロゴ、絵柄などのカテゴリー別使用権を第三者の企業に与えることで、売上げに応じた

ロイヤリティを徴収している。ライセンス方式は、さまざまなカテゴリーでブランド使用

権を与えるため、すそ野が大きく広がり、多額の収入がもたらされることがある。

ライセンス方式による収益が最も生まれている分野としては、エンターテインメント

業界(映画、コミックなど)におけるキャラクター使用権があり、企業の商標やブラン

ド使用権などがそれに続く。スポーツ産業における団体、個人のライセンシング(ライ

センス供与)も、特に欧米では巨大なビジネスとなっている。

一方で、ライセンス·ビジネスにはリスクもある。ライセンシー(使用権を借りる側)

が値頃感を出して量をさばこうとして材質を落としたり、安易なデザインを採用したり、

イメージにそぐわない売り方に走るといったことが想定される。一方、ライセンサー

(使用権を貸す側)が要求する契約上の最低販売数量が多すぎ、末端市場で値崩れを起こ

すことも考えられる。したがって、ライセンサーは製品やデザインの品質は当然ながら

販売方法に至るまできめ細かな管理を徹底して行うことが求められる。