流通戦略3

流通戦略3

 

流通チャネル構築ステップ

流通チャネルは、先に述べたように企業経営に大きな影響を与え、しかもいったん築

いてしまうと変更することは難しい。したがって、その構築にあたってはさまざまな要

因を考慮に入れながら系統立てて考えていく必要がある。

 

流通チャネルの構築ステップ

ターゲット市場および自社経営資源の把握

チャネルの長さの決定

チャネルの幅/排他性の決定

展開エリアの決定

チャネル·メンバーの選定

チャネルの動機づけ政策の決定

 

各ステップを通じて

考慮すべき要因

 

○人口動態

○製品特性

○顧客の購入スタイル

○経済性(投資額,維持コスト)

○競合の流通チャネル政策

○自社のブランド力、製品ライン、サービスの競争力

○法規制

 

一一ターゲット市場および自社経営資源の把握

企業が製品の効果的な流通チャネルを選択·構築する際には、まずその目標とする市

場をどこに絞るかを決めておく必要がある。一方、チャネル構築には莫大なコストがか

るので、経営資源(ヒト、モノ、カネ)の制約も考慮しなくてはならない。

チャネルの長さの決定

長さとは、流通チャネルの段階数を指す。最初に決めなくてはならないのが、直販に

するか、それとも外部の流通業者を用いるかということだが、そこで問題になってくる

のが、販売量が直販方式を維持するのに十分かどうかである。この判断にあたっては、

想定される総販売量、製品特性や製品単価、潜在顧客の地理的集中度または分散度、顧

客の規模、そして1取引当たりの取引量が影響する。

極端な場合、製品単価が安く潜在顧客も分散している製品を、メーカーが直接販売す

るのは非経済的であろう。逆に、製品単価が高かったり大量購入の可能性があり、顧客

が地理的に集中していたり特定できる場合であれば、直販のほうが有利になる。また、

経済性をある程度犠牲にしてでも、直販を一定比率維持する場合もある。多くの高級プ

ランドは、百貨店で販売を行うインショップの手本となり、さらに超優良顧客の囲い込

みなどの使命を果たすことを目的として、直営店を運営している。

チャネルの長さをうまく活かしたのが、前述のセシールである。通販には小売店での

販売と比べて大きな限界がある商品を手に取ってみたり、試着したりできないことで

ある。セシールは、それをカバーするために「郵送料会社負担で返品可能」というシステムを設けた。

このシステムの合理性は、一度商品を購入した顧客が同じものを買う際に返品するこ

とはまずないという点にある。セシールの主力商品である女性用下着は本来消耗品(特

にパンティストッキングなど)であり、一度購入して問題がなければ、購入のハードルは

低いリピーターを獲得できれば、試着できないという通販のデメリットは小さくなる。

また、通販であれば、店頭で陳列するスペースがないため商品の品揃えに限界があると

いうこともない。セシールは通販という流通形態のメリットを活かして、品揃えの豊富

さで売上げを伸ばしたのである。

 

一一チャネルの幅/排他性の決定

次に、チャネルの各段階で使う流通業者の種類と数、すなわちチャネレの幅を決定する。

メーカーは、製品の販売に心要な流通業者の数を決める際、これに関するトレード

オフを認識する心要がある。顧客の利便性を最優先するならば流通業者の数を増やそうとする

だろうし、製品の販売権を流通業者にとって魅力的なものにすることが重要な場合には、

流通業者ごとの担当範囲を広くして業者数を制限することが望ましい。

流通チャネルの幅に関しては、以下のような3つの基本政策がある。

開放的流通政策

自社製品の販売先を限定せずに、広範囲にわたるすべての販売先に対して開放的に流
通させる政策。大量販売を狙う最寄品に採用されることが多い。デメリットとしては,
コントロールしにくく、販売管理のオペレーションが複雑になることが挙げられる。
特定市場を担当する流通業者数が過剰になれば、同じ自社製品を扱う流通業者間での
販売競争が激しくなり、販売価格が下がって流通業者の利益が減ったり、製品イメージ
の低下を招いたりするおそれがある。そうした場合には、思い切って流通業者を選別す
るか、常習的に安売りを行う流通業者に対しては、懲罰の意味を込めて販促サポートを
減らすなどの処置が心要となる。

選択的流通政策

販売力や資金力、メーカーへの協力度、競合製品の割合、立地条件などの一定の基準
で選定した流通業者に、自社製品を優先的に販売してもらう政策であり、開放的政策と
排他的政策の中間に位置するものと言える。平均以上の成果、適度なコントローし、流
通コストの低減などが実現しやすいとされる。

排他的流通政策

特定の地域や製品の販売先を代理店あるいは特約店として選定し、独占販売権を与え
る代わりに、ときには競合他社製品の取り扱いを禁じる政策である。メーカーはこの政
策により流通業者の販売意欲を高め、その販売方法をコントロールし、製品イメージの
向上や利益確保を図ることができる。効率的·有効的なマーケティング活動を行うため
の系列化促進政策を展開するときに有利であり、自動車、家電製品でよく見られる。た
だし、政策を維持するために生じるコストの増加や、流通業者の創造性,主体性が減退
するなどのデメリットがある。
これらの政策とは別に、直販営業部隊と流通業者との間の販売競争についても考えて
おく心要がある。本来、直販部隊と流通業者は互いに補い合うべきものだが、両者間に
摩擦が生じることは決して珍しくない。製品の提供者は、チャネル間における製品およ
び市場の境界線を維持し、明確に区分することにも注力する必要がある。
ルイ·ヴィトンジャパンは、百貨店チャネルとダイレクトチャネルを一定の比率
でバランスよく組み合わせている。同社では、100万都市と言われる大商圏の一流百
貨店からさらに選りすぐってインショップ店舗を展開する傍ら、東京·横浜、大阪、神
戸という大都市に限定して直営店を展開し、さらにテレマーケティングなどでも大きな

売上げを上げている。テレマーケティングは、極度の排他的流通の弊害として「店舗の
ない地方で発生する満たされない需要」に応えるための最適なㄪ法として考案されたも
のである。この大義名分のおかげで、既存の取引百貨店もある程度納得している。直営
店に関しても大都市の一部に限定することで、百貨店との競合を最小限に抑えている。

展開エリアの決定

販売エリアの広さも決定しなければならない。一気に全国展開を図る場合と、地域を
限定して徐々にエリアを拡大していく場合とでは、プロモーション方法も心要な経営資
源の量もまったく異なる。また、流通業者は地域密着型の展開を図っている場合が多い
ため、取引するメンバーの選定にも影響が出てくる。

チャネル·メンバーの選定

以上が決まれば、次はチャネル·メンバーの選定である。マーケティング担当者は、
どのような企業と取引を行うか、明確な選定基準を持たなければならない。選定基準と
しては、財務内容など企業の健全性、果たしうる機能、得意とする製品カテゴリー·販
売組織の確立度、顧客の数と質、対順客交渉力、顧客との人間関係、小売店での売り場
獲得力、取引条件、物流能力、情報武装のレベレ、コントロールのしやすさなどが挙げられる。

花王が2003年に発売した ヘルシア緑茶」は、体脂肪を消費しやすくするという
機能を消費者が高く評価すると考え、価格を他飲料より高い180円に設定した。発売
の際には、チャネルをコンビニエンスストアに絞った。コンビニエンスストアにはメイ
ンターゲットの中年男性がよく利用するという特徴があり、定価販売を原則としている
のでディスカウントを防ぐこともできるからである。
ホンダは1960年にオートバイでアメリカに進出した際に、典型的な買回品である
オートバイのビジネスでは知識豊富で熱心な販売員と腕のよいメカニック、およびアフ
ターサービス設備を持つ優秀なディーラーをいち早く確保することが成功のカギである
と察知し、わずか数年の間に優秀なディーラーを全米最大規模でフランチャイズ化した。
その結果、ヤマハやスズキなどの競合メーカーは、相当期間、広大なアメリカ市場でホ
ンダの後塵を拝することになった。