マーケティングの意義とプロセス3

マーケティングの意義とプロセス3

企業におけるマーケティング機能

マーケティングは、大きな視点で市場を捉え、企業経営に役立てていく機能を担っている。企業は経営理念という枠組みの中で、外部環境と自社の経営資源を考慮しながら戦略を選定していくが、外部環境で最も注意したいのが市場環境である。市場は日々変化し、市場から拒否された企業は収益を確保できなくなる。市場の構造的変化をいち早くキャッチし、企業の進むべき方向性を見出し、経営戦略や事業活動に落とし込んでいく役割を果たすのがマーケティングである。

企業戦略との関係

マーケティング戦略は、全社戦略あるいは事業戦略に沿った形で策定実施しなくてはならない。企業の戦略は通常、 経営理念とビジョンを上位概念とし、それに沿って全社戦略、事業戦略、機能戦略と言う階層構造をとっているものだが、マーケティング戦略もそれと同じような構造となっている。つまり、全社レベル、事業レベル、製品レベルなど、それぞれのレベルでマーケティング活動が行われている。

製品レベルの視点では、自社が扱っている製品について「誰に何をいくらで売るか。それをどのように認知させ、どのように供給するか」をトータルで考えていく。だが、製品の数が増えるにつれて、ここの製品ベースでは、最適なマーケティング戦略であっても、事業単位あるいは企業全体で見た時に、営業組織の連携が取れていない、製品ごとに表記が付随サービスにばらつきがあるなど、機能の重複や不整合が生じやすい。そこで事業レベルあるいは、全社レベルでマーケティングの方針を決定することで、シナジー(相乗効果)を働かせながら製品間の調整を図っていく必要がある。全社レベルのマーケティング戦略では、さらにコーポレートブランディングなど、 会社全体に関わる事柄を扱う。

事業ドメインと提供価値

ハーバード大学などで教鞭をとったセオドア・レビットは1960年に、 顧客ではなく、自社が提供する製品を中心に事業の定義をとらえているのは危険だと警鐘を鳴らした。事業ドメインや提供価値は市場環境の変化に合わせて見直す必要がある。

製品中心ではなく、顧客にとっての価値を中心に考えることにより、 より多くの市場機会を捉えていくことが大切である。

マーケティング機能と他部門との関係

企業は生産、営業、開発、財務、人事などの様々な機能の集合体であるが、どの機能においても、内外の顧客を意識しながら活動したり、マーケティング部門と連携や協業を行うことが不可欠である。企業にキャッシュをもたらす顧客が全ての活動の原点となる、という考えに立てば、顧客こそが企業内の各機能をコントロールする基準になる。そうした顧客の期待を明確化し、その充足を保証する各機能を統合していくのがマーケティング機能である。

組織戦略とマーケティング

組織構造や人事制度はマーケティング戦略の範疇には含まれないが、 実行に際して無視できない要素でもある。自社の方針、組織文化や諸制度との合致は、戦略を立てる上での一つの制約条件となる。

特に、マーケティング戦略と人事戦略とが連動していないと、現場で混乱が起こるおそれがある。例えば、目標を利益重視によく一方で、個人や部門の業績を売上高や市場シェアで評価すれば、現場の人間は何をめざして行動すれば良いかわからなくなる。

せっかく立てた戦略が、実行フェーズでつまずく時は、組織や諸制度との整合性がとれていないケースも多い。マーケティング担当者の評価報奨において、業績を正確に測定し、そのぶんの見返りが受けられる仕組みがなければ、よりよいマーケティング活動を行うとするモチベーションは生じにくい。

マーケティング戦略を効果的に実行していくためには、組織構造、職務設計、人事システム、人員配置などの仕組みとの整合性にも留意した方が良い。さらに、場合によっては、戦略の遂行上、既存の諸制度について変更を働きかける必要性があるかもしれない。

マーケティング部門は経営者への登竜門

アメリカに本拠を置く家庭用品 プロダクトアンドギャンブル P & G はさまざまなマーケティング手法をいち早く導入した企業として名高い。  P & G はマーケティング組織の構築という観点でも特筆される。1930年代、同社は社内競争による活性化を促すためにブランドマネジメント組織を導入し大きな成功を収めた。各ブランドグループはその組織的枠組みの中で整合のとれたブランド戦略に取り組む。ブランドマネージャーは「結果重視、社内昇進のみを前提にした人事評価制度」の下に徹底的な秘密主義を貫きながら、開発、製造、広告、販売などの機能部門を自分のブランドのために有利に動かして、自ら立案したマーケティング計画を実行し、成果を競うのである。

その後 P & G は社外競争が激しくなったことを受けて社内競争を緩和させる組織体制へと移行した。このように、環境変化に合わせて柔軟に組織を再構築させるられることも P & G の強さの一端を担っている。 P & G はゼネラルエレクトリック(EC)と並んで多くの経営者を世に送り出したことでも有名である。そして、その多くはマーケティング部門でブランドマネジメントに携わっている。同社の卒業生には GE のジェフリー・イメルト会長、 Microsoft のスティーブバルマー CEO、 ボーイングのジェームズ・マックナーニ CEO などがいる。マックナーニCEO は P & G 時代に「意見よりデータ重視」「顧客への奉仕」など基礎となる考え方を叩き込まれたが、それは P & G とはマーケティングのアプローチが異なる分野でも役立っていると語る 。GE の イメルト会長も P & G で学んだ顧客対応手法や市場分析手法がその後のキャリアの礎になったと述べている。そのためアメリカには「 P & G で学び、他の会社で稼ぐ」という言葉まである 。P & G は1980年代には市販の連携を促進するECRなどの情報システムをいち早く開始し 、IT 時代のマーケティングの先鞭をつけたことでも知られている。常にマーケティング手法の最先端をいき、優秀な人材を育てる P & G のマーケティング部門が多くの経営者を輩出してきたのは決して偶然ではない。それは経営におけるマーケティングの重要性を雄弁に物語っている証左といえよう。