環境分析と市場機会の発見1

環境分析と市場機会の発見1

ポイント

マーケティング環境分析の目的は、外部環境と内部環境を分析して、市場における機会や脅威を明らかにし、自社にとっての機会と戦略の方向性を探ることにある。市場の機会は、マーケティング環境の中に「ある」ものではなく、発見した事実を元に「創り出す」ものである。その機会をうまく生かすために、自社の抱えるマーケティング課題を洗い出し、マーケティング目標を明確にすることで、 具体的な施策を検討するための準備が整う。

 

理論

 

個人も企業もその他の団体も、好むと好まざるにかかわらず、周囲の環境から有形無形の影響を受けながら、それぞれの活動を営んでいる。社会には様々な環境要因が存在し 、絶えず変化を続けている。そうした環境変化を敏感に察知し、自己の強み、弱みを新しい環境下で再評価できる柔軟な能力が備わっていなければ、競合に遅れを取ってしまう。そこで重要なのが、的確な環境分析である。

環境分析では、おきている事象をもとに、現場を正確に把握し、必要な情報を取捨選択し、それらを深い洞察力を持って解釈することにより、市場の機会と脅威を見出す。そして、自社にとっての機会やマーケティング戦略の方向性を明らかにしていく。

 

環境分析

 

環境分析は大きく、外部分析と内部分析に分けられる。このうち、

 

外部の環境である

顧客分析Customerカスタマー)

競合分析Competitor)

内部の環境である

自社分析Company )

 

の3つをまとめて3 C 分析と呼ぶ。

 

外部分析

 

外部分析は企業のコントロール外にある外部の環境について分析するもので大きく

①マクロ環境分析

②顧客分析

③競合分析

に分けられる。

一般に環境といえばマクロ環境をさすことが多いが、マーケティングの観点からは、マクロ環境に影響される消費者の動向を顧客市場環境と捉え、さらにこうした環境変化に対応した競合企業の動静も合わせて外部環境として包括する。環境分析が一筋縄でいかないのは、こうした様々な環境要因が互いに影響を与えつつ、企業を取り巻いて刻々と変化するからである。

 

①マクロ環境分析

 

マクロ環境とは、企業を取り巻く外部環境で、企業がコントロールすることはできないが、企業活動への影響力を持つものである。具体的には人口動態(年代、性別、世帯構成など)、経済(経済成長率、個人消費、産業構造など)、個別業界動向(売上高、 業界構造、原料の供給状況など)、生態学的環境(自然環境、公害など)、技術(新技術など)、政治法律(法律改正、規制、税制、外圧など)、文化(ライフスタイルなど)、社会環境(交通、治安など)といった要因をさす。

例えば保育ビジネスに打って出ようと考える企業であれば、最低でも次に示すマクロ環境を押さえておく必要があるだろう

 

人口動態:低年齢児人口、出生率動向、世帯構成、共働き世帯数など

経済:女性の就業率、家計動向、保育所数など

政治:保育所の許認可、雇用関連法規、国や自治体からの補助金など

文化:女性の社会進出の程度、育児休暇に対する認識、シングルマザーの容認など

業界:全国の保育サービスの実態(参入数、収支、地域的ばらつきなど)業界が抱える問題など

 

マクロ環境の中でも技術環境と政治・法律環境は特に企業経営に非常に大きなインパクトを与えることがある。まず技術環境の変化は、産業構造のインフラを変え、製品開発に自由度を与え、ひいては人々の生活様式に今で多大な影響を与える。企業としては、技術動向に情報のアンテナを張り巡らせ、進んでマーケティングに取り入れる努力が必要である。

法律や行政環境もまた、マーケティング戦略に重要な影響を与える。かつて弱小の小売店を保護するために生まれた百貨店法や大店法、大店立地法による規制は、時代の流れの中で大きく緩和された。証券業者と銀行業界などでは、業界の垣根の多くが取り払われ、ワンストップ・ショッピングへのニーズが高まり、業界を超えた再編が加速している。こうした規制は、それぞれの業界を保護育成するために必要と政府が判断し、制度化したものであるが、自由競争推進の名のもと徐々に姿を消しつつある。

このような規制緩和に代表される法律や行政環境の変化が、特定企業の現在のマーケティング戦略にプラスに働くかマイナスに働くかは一概には言えない。

規模の大小を問わず、変化を予測して対応を怠らなかった企業には絶好の市場機会がもたらされる一方で、変化に備えずに過去の仕組みに安住していた企業にとっては大きな試練となるのだ。

 

PEST分析

マクロ環境の代表である

政治・法律 (Politigal  Environment)

経済(Economic Environment)

社会(Social Environment)

技術(Technological  Environment)

 

に関する分析を、頭文字をとってPEST分析ということがある。

 

②顧客分析

 

顧客、 すなわち潜在的に購買の意思と能力がある人々を分析することは、マーケティング、ひいては企業活動の出発点である。企業は顧客に関して以下の分析を行う必要がある。

 

購買人口:想定される潜在顧客はどれくらいいるのか?顧客の地域構成は?

顧客ニーズ:顧客は何を欲しいと思っているのか?顧客は何に不満を感じているのか?

購買決定プロセス:購買の際に重視するポイントは?情報はどこで集めるのか?購買までにどの程度の期間を要するか?いつどこで購買を行うのか?どのように購買するのか?どの程度代替品と比べるか?

購買決定者:購買の意思決定者は誰か?購買にあたって誰の意見を聞くか?

購買行動に影響を与える要因:価格、普及度(人が使っていたから自分も買う)、ブランド

 

先ほど挙げた保育ビジネスで言えば、誰が財布を握る購買決定者なのか(母親、両親、祖父母ほか)、育児情報はどこで入手するのか(祖父母、育児書、病院、セミナー他)などを知らなくてはマーケティング戦略は立てようがないだろう。

 

③競合分析

上記二つの分析は、主に市場の需要という観点から外部環境を把握しようというものであったが、 それ以外にも、いかに市場を競合他社から奪い取るかという競争の視点が必要になる。従って、競合他社の戦略(差別化、価格など)、パフォーマンス(売上高、シェア、利益、顧客数など)、経営資源(営業担当者数、生産能力など)などの分析が第三の外部分析として重要である。

分析対象とする競合他社は、市場をどう捉えるかで変わることにも注意しなくてはならない。例えばキリンビールは、ビール市場では他の大手3社、輸入ビールや地ビール会社と競合しているが、もう少し大きく捉えたライトアルコール市場の中では、チューハイメーカーやワインメーカーなどとも競合している。競争上の課題を考える上では、意味のある競合相手をピックアップしなくてはならない。

競合分析では、現在は市場に参入しなくても、将来参入する可能性が高い潜在的競合(例えば外資系企業)、あるいは代替技術(例えば衛星放送に対するケーブルテレビ)などにも注意して動向を把握しておいた方が良い。